ラミレスの魅力2〜ホセ・ラミレス3世〜

前の記事では、ラミレスの魅力と言いながら、ホセ・ラミレス1世の弟マヌエル・ラミレス中心の記事となってしまいました。

今回はその後編。ホセ・ラミレス1世の孫にあたるラミレス3世についてまとめていきます。

この先の表記について、ホセの家系については○世だけで、ホセ・ラミレスは省略させてください。
きっとこの方が読みやすいと思います。
弟さんについては、マヌエルと表記させてください。

またこの内容の大部分は『ラミレス3世が語るギターの世界』を要約しています。

新しい材質 赤杉(Thuja Plicata)

3世といえば、職人をたくさんやとって、多くのギターを作らせ
自身は監修役に徹したことでも有名ですが、

ギター本体に関わることで言うならば、表面版に用いた木材が有名ですね。
3世はこれまでギターに使用されたことのない赤杉(学名:Thuja Plicata)を用いました。

この赤杉のギターの良い点はご存知のとおり、
音の立ち上がりが早く、音量にも恵まれていることです。

しかし、一般的なイメージの「杉」とこの赤杉は、どうも別物で、発見も偶然なようです。

どういうことか。
私たちがわかる身近なところでいうと、

厳密には「ししゃも」じゃないけど、ししゃもとして遜色がない魚。
厳密には「しめじ」じゃないけど、しめじとして売られているキノコみたいなところでしょうか。

杉と類似性のない“杉”は松科?

3世の時代、ネックの製作に欠かせなかった中米の杉が、
入手困難になっていたようです。

そんな折に、工房の近くの木材商で赤杉が売られていたことを聞き、
その赤杉のサンプル材を切って一昼夜放置したところ、
木材特有の反りが起きなかったことから、
「これはひょっとして?」と思ったかどうかまでは、書いていませんでしたが(笑)
この木材で表面板を作ると願っている以上のギターが完成しました。

この時は2本ギターをつくったそうです。
以後、この赤杉でギター製作を始めますが、
その優秀さから、この赤杉も入手するのが困難になってようです。

ここから重要(私も完全に勘違いしていたこと)

さて、この杉は学名上では杉というより、
ジャーマン・スプルース、つまり松に近いとのこと。

実際、杉の類型は、

”Cedrella Odoratta”という中南米系の杉
”Cedrus Spi”という、レバノン、アルジェリア、モロッコ、ヒマラヤなどに自生する杉
のどちらかを指し

”Oxford-on-Thames” 杉にしても相当累計が違うようです。

日本では「赤杉」とも言いますが、どちらかというと「油杉(ゆさん)」としてしられているようです。
分類は松科。杉じゃないんですねやっぱり。

また余計な例えかもしれませんが、シマウマが牛の仲間なのと同じことでしょうか。。。

馬が手に入らないので、シマウマを連れてきたら、元から使ってた牛の仲間で
牛よりもよく働いてくれたみたいな?

3世のギター

3世の魅力を語ろうと始めた今回の記事も、どうも違う感じになってしまったので
3世の工房で作られたギターをお持ちの先輩K氏のギターを弾かせてもらった感想を書いておきたいと思います。

その前に、私の入門期のギターはギタルラ社で買ったエコールです。
このギターはギタルラ社の依頼で、コダイラ楽器が製作しているものです。

先輩K氏のラミレスを弾かせてもらったとき、最初に持った印象が
このエコールそっくりだったのです。
ラミレスに寄せて作られているのは間違いないと思います。

ただし、弦を弾いた瞬間の違いは凄い!

まるで違う楽器です。身体にズンと音が入ってくる感じがします。
そして、手元ではもっと大きな音の塊ができている感じがして、
まるで、かめはめ波や波動拳の熱気があるような感じがします。

このギター相手に二重奏はできないと思うくらいの音量です。

ですが、音量だけでなく弾きやすい。無理がないというか。
それでいて音のツヤもあって、
「これは凄いなぁと」と思わず口にしてしまうほどでした。

実際、曲を弾くとこのギターに慣れる必要があると思いましたが
弾きこなせると楽しいだろうなと思いました。

また弾かせてくださいK先輩。

3世の工房の誰がつくったか

これで最後にしておきます。3世の工房には優秀な職人さんがたくさんいて、
3世に認められた職人はラベルの下に番号やイニシャルを入れることができました。

私が弾かせてもらったギターが誰が作ったのかは書いてあったのですが、
覚えていません。

いずれにしも、マヌエル・ラミレス、ホセ・ラミレス一家がクラシックギター界に残した影響は計り知れないのだと改めて思いました。

バイオリンと比較されると歴史が浅くて、ピアノと比較されると裾野の狭いギターですが、
裾野が広がっていろいろな演奏者がもっと現れてくると素敵だなとおもいました。